あいすみません

早期退職?セミリタイヤ?・・・いやいやダウンシフトです!「筋トレ」「読書」「映画&音楽&スポーツ鑑賞」で心身を整えています。

傑作ドキュメンタリー「殺人者への道」:Netflix(ネットフリックス)はこれが面白い!(5)

タイトル:「殺人者への道」

原題:Making a Muderer

監督:ローラ・リッチアーディ&モイラ・デモス

ドキュメンタリー/2015年/アメリカ

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このオリジナル作を観たくてNetflixの会員になった

わたしがようやく今年動画配信サービスNetflixの会員になったのは、とにかく!この作品が観たかったからです。予告を観た時から、これはいったいどういうこと?と思い、DVD派のわたしも動画配信に移行してきた次第です。かなり話題になっていたので、すでに視聴済みの方は多いかと思いますが、評判通りの傑作ドキュメンタリーであり、ものすごい内容なので、わたしも紹介させて頂きます。

フィクションを軽く超える実話

ドキュメンタリーなので、事実を検索できるという事も有り、ネタバレがある書き方をしています・・・あいすみません、お許しください。

 

アメリカのウィスコンシン州マニトワック群で、1985年にレイプ事件を起こしたとされ、その後18年服役していた男スティーブン・エイブリー。逮捕時から一貫して無実を訴え続けていた彼は、2003年 DNAの再検定により、ようやく冤罪であったことが判明される。18年間もなぜ?彼が無実の罪で服役していなければならなかったのか?ドキュメンタリーはそこから始まる。主人公はまず冤罪事件の被害者だったのである。視聴するわたしは、この冤罪事件を暴くストーリーを観るのだと思っていた。

 

ところが!事件はもっと異様なものへと変化する。2005年に、郡そして警察組織を相手取り訴訟を起こしたエイブリー、18年も無実の罪を着せられたのだから当然である。刑事司法制度も、その捜査の過程があまりにも酷いということが問題視され、州を挙げて改革が開始される。その賠償金額は3000万ドル以上(日本円で30億円以上)。人口約8万人の小さな郡で、この金額はとてつもない金額である。エイブリーがこの損害賠償訴訟に勝つ可能性は高い。そんな記録的な審理も佳境に入ろうかとするある日、エイブリーは新たに起こっていた別の女性の殺人事件の容疑者として緊急逮捕されるのだ。

 

そして裁判が始まる。エイブリーは警察機構の訴訟逃れとメンツをつぶされた嫌がらせにより、再び無実の罪を着せられようとしていることを主張する。是が非でも殺人事件で有罪に持ち込もうとする郡の警察と、エイブリーが雇った優秀な弁護士たちの法廷での争い。証拠や証言による駆け引きは、サスペンス映画を観るかのように進む。

 

そして警察は、驚愕の発表を行う。エイブリーの従妹である16歳の少年ブレンダン・ダッシーを、共犯として逮捕したのだ。この16歳のブレンダンがエイブリーと共に、レイプして殺したと自供したというのだ。エイブリーの弁護側は、この自供の映像を観て、完全に誘導尋問であると主張する。

 

そして判決が出る。その判決の内容は、エイブリーは殺人で有罪となり仮釈放なしの終身刑、16歳の少年ブレンダンは、2048年まで仮釈放なしの終身刑となったのだった。エイブリーの完全な敗北で、番組は終わる。

 

うー、と唸ってしまう展開です。フィクションを超えた現実の恐ろしさ。とにかく、スゴイとしか言いようが無い、視聴後は、個人の無力さ、警察権力の恐さ、ドキュメンタリーの中の荒涼とした風景に通じる虚しさと、自分がこの立場になったらどうする?と考えた時に・・・いろいろな感情が押し寄せてくる作品です。

事件の背景にあるもの

この作品は背景にあるものを、ひとつひとつ丁寧に取材し、視聴者に提供してくれます。

1:地域制

事件が起こったのは、ウィスコンシン州の中でも貧しい郡です。アメリカの田舎の広い地域で、たった8万人の住民です。映像の映る風景では、冬は寒く、台地は低く広く、大きな街もありません。そんな地域の閉鎖性が、この事件に大きく影響しています。とても濃い人間関係が、どす黒く渦巻いているのです。そんな中で起こる、重大事件。警察は犯人を、絶対に逮捕しなければならないのです。そして逮捕するなら、好きな奴より嫌いな奴がいいのです。

2:村八分

エイブリーは若いころ、猫を殺していたという事実が有ります。問題児だったエイブリーは、学も無く、地域の鼻つまみ者であり、一族も地域住民の中で浮いていたと示唆されます。裁判でも明かされますが、一部の人は本当にこの一家を嫌悪しているのです。1985年の最初の暴行事件で、逮捕されるきっかけとなったのは、保安官から嫌われていたからなのです。なぜならば、エイブリーが従妹ともめたら、その夫が保安官だったのです。この最初の事件では、警察はエイブリーが犯人ではなく、別の犯人がいることを分っていたのに、エイブリー憎しで、証拠を握りつぶしていたことが明かされます。

狭い社会の、濃い人間関係がうむ、なんという怖ろしい真相。

3:ゆがんだ捜査

2005年の殺人事件の捜査陣は組織の総力をあげて、エイブリーが犯人であると追い込んでいきます。この作品を観る限り、そこに公平性はありません。他の可能性はあたらずに、徹底してエイブリーを攻め立てるのです。それは、1985年の冤罪と証明された事件で、多額の賠償を払わなければならない危機、そして、警察組織のメンツを、よりによってあの鼻つまみ者のエイブリーにつぶされたという憤怒、これらからくるものである、と感じられます。このドキュメンタリーでは、証拠を警察がねつ造している疑惑も描かれます。警察の動きは、とても黒に近いグレーです。違法な家宅捜査、違法な事情聴取、異例の証拠の取扱い、何度も捜査した場所からなぜか突然現れる不利な証拠、その時に必ずいる、エイブリーを長年憎む刑事。あまりにもな展開で、これは本当に事実なのか?と目を疑います。

4:マスコミ

この作品を観る限り、マスコミはマスゴミと化しています。ショッキングな、報道もどきの殺人事件裁判をコンテンツ化し、ウソと真実の確認取材せずに、視聴者にエンタテインメントとして垂れ流しています。アメリカは陪審制度ですので、現在進行中の裁判がゆがめられるのです。検察はそこを最大限に利用し、記者会見などで、違法すれすれの発表を行い、エイブリーが怖ろしく危険なレイプ殺人犯である、ことを印象付けようとし、結果成功します。日本のテレビも、こういう傾向がありますね。被疑者への疑惑が高まるよう警察は記者クラブを通じてマスコミを利用します。世論誘導・印象操作です。現在日本のテレビが視聴率不振なのは、テレビメディアそのものがNETメディアに置き換わっており、20代以下は観ないという事が有りつつも、もうひとつは、公権力や大きな強い権力を持っている相手には弱いのに、権力に守られていない個人の不幸や失敗では常に大はしゃぎするので、そんな内容のモノばかり観たくない、と思う人が増えているのではないかと思っています。日本のマスコミはすぐにでも、事件報道時に記者クラブ制度という悪い制度にたより、警察発表をマスコミが書き写すという内容の記事を量産するという状況を打破し、独自に取材をする、真実を自分で探す、警察情報に頼り真に受けるだけではなく取材することが求められていると思うのです。日本も冤罪が多すぎるのですから。

5:弁護士の能力

もしも自分が無実の罪で逮捕されたら、弁護士の能力で結果が決まるという事を理解させてくれる作品です。エイブリーの2005年の事件の弁護士はとても優秀です。しかし、16歳のブレンダンの最初の公選弁護士のように、検察の手先となって動こうとする無能な弁護士が付くと、自分の無実の主張に反して動かれ、とんでもない奈落に突き落とされてしまいます。ブレンダンの自供は、その自供ビデオを観ると、明らかに誘導尋問です。刑事が先に答えを質問の中で語り、それをブレンダンの言葉で復唱させるように答えさせています。また本当のことを話しても刑事が聞きたくない内容であると、嘘をつくなと脅します。最初の公選弁護士は立ち会っていないどころか、ブレンダンが不利になる証拠を、わざと話させて検察と取引しようとします。観てて怒りを覚えるヒドイ奴です。この自供について検察は、「無実なら自供はしません。被告人が自供したのは、罪を犯したからです」と言い放ちます。彼の新たに公選された弁護士は、「捜査官たちは訓練を受けています。自供の引き出し方を学ぶのです。真実の追求とは違います。警察は自供を真実と同じだと信じているのです。真実は、実際に起きたことですが、自供は実際に起きたこととは限らない」と語っています。

日本も冤罪地獄

これはアメリカの話で日本の話ではないからね、と言う方もいるでしょう。しかし先ほども書きましたが日本でも、たくさんの冤罪事件が起こっています。

 

最近でも・・・

袴田事件(1966年・静岡県)、足利事件(1990年・栃木県)、志布志事件(2003年・鹿児島県)、鹿児島・強姦事件(2012年・鹿児島県)、が冤罪として証明され、飯塚事件(1992年・福岡県)も無実を訴えています。この飯塚事件は死刑判決を受けた被疑者が冤罪を訴えているにもかかわらず、判決からすぐ死刑執行されてしまっているという、仰天の状況なのです。

 

日本の逮捕者の有罪率は99%です。警察、検察、裁判がつながってしまっており、最初の警察に間違った見立てをされると、冤罪が起こりやすい環境です。警察は犯人を絶対逮捕したい組織です。事実解明よりも、犯人を特定し逮捕する、というところに全力を挙げる組織です。上記に上げました日本の冤罪の捜査過程で、どんなことがおこったかを関連本を読み調べると、罪を犯してなくても、こんな扱いを最初からされるのかと恐怖を感じます。もちろん被害者および遺族の感情もありますし、地域社会の安定もあるでしょう。でも間違いを起こさない、おきた場合には早急に正せる、組織や制度が無いと、冤罪は増加し続けてしまいます。

法律・正義そして真実

この作品を観て、アメリカの素晴らしいと思うところがひとつあります。取り調べの映像が、出てくるところです。「記憶にございません」「記録しておりません」などという、ふざけた国会答弁を毎日聞いている日本人からすると、こんなに素材が提出されるのは、すごいなと感じました。映像の力で、後からウソが暴けるのです。日本の警察や政治家が、映像で記録を撮ることを嫌がる理由がわかります。ミスや法律違反が、後から検証され暴かれる恐れがあるからです。冤罪を無くすために、後から検証するためにも、捜査過程は取り調べだけでなく、家宅捜査など、緊急の場合以外は例外を設けずに、すべて映像に撮影・記録することを義務付けるのが重要と思います。

 

この作品の場合は、創っている監督が、捜査過程や裁判の結果に疑問を投げかける内容であるにもかかわらず、これらの素材を手に入れられていることはとても素晴らしいと考えます。日本のように、ヤバいことには権力者に忖度し情報や記録を破棄し黒塗りするという状況とは一番違う部分です。

 

そして法律に携わる、この作品に出てくる優秀な弁護士たちの意見も傾聴に値します。「人間の努力は、あいまいで不完全なものです。刑事裁判で真実を追求するのは、空虚なことかもしれません。しかし思うに正義とは、真実が不確かである時に、自分の持つ信条に従って、誠実に行動することです。過ちを犯してでも、人間から自由を奪うのか、過ちを犯してでも、人間の自由を認めるのか。得てして真実は不確かですから」・・・その通りです。不確かだからこそ、後から第三者が検証できるようにする必要があるのです。

その後

NETで検索をしましたら、youtubeなどでは、アメリカでの放映後の反響映像をいくつか見ることができます。また、このドキュメンタリーを観て、署名活動もすすんでいます。

当時16歳だったブレンダンは、放映後その反響から条件付きの釈放命令が出ました。まだ無罪となったわけではないのですが、捜査過程や裁判時の不当な扱いが、認められたのです。

またシーズン2の製作も発表されています。これは楽しみですね。

 

星取

★★★★★(5点満点)

この作品は監督の意図が明確に表されています。監督は再び不当な冤罪なのではないか、と考えて制作しています。わたしは、スティーブン・エイブリーという人物は、その本心を理解するのは、かなり難しい人だと思います。子供の頃動物虐待をしていた、あの生活環境、などはグレーな要素です。ただ警察が事件の捜査時に、彼を有罪にすりためにかなり無理をした、言い換えると不正をしたことは、間違いないと思えました。

 

ブレンダンの自供は、明らかに誘導です。推定無罪の原則が崩れると、冤罪事件が山ほどおきます。しかも警察が、恣意的に組織として動いています。わたしは、それが映像の力で検証され、不正が有れば正されるというのは、素晴らしいと考えます。

 

日本でも、「足利事件」「桶川ストーカー殺人事件」が、清水潔さんという、ひとりの報道記者の力で正されました。清水さんが著した関連書籍が出ていますので、ぜひお読みください。ドキュメンタリーや本当の報道の力を、見ることができる素晴らしい内容ですので。

 

さて、いるとすれば真犯人は誰なのか?警察は他の怪しいと思われる人物を、捜査をしませんでした。(作品の中に何人か、そのように感じさせる人がいますが・・)取材をしている監督たちは、予想はしているのでしょうか?シーズン1では、作品の中で提示しませんでした。シーズン2で、どんな展開になるのか、Netflixでの公開を首を長くして待つつもりです。

(それでは・・・あいすみません)

 

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