あいすみません

早期退職?セミリタイヤ?・・・いやいやダウンシフトです!「筋トレ」「読書」「映画&音楽&スポーツ鑑賞」で心身を整えています。

山田太一著(脚本):ドラマ「男たちの旅路」(なぜ?今の時代にこのドラマを何度も思い出すのか・・・)

男たちの旅路

脚本:山田太一

出演:鶴田浩二、水谷豊、桃井かおり森田健作、芝俊夫、岸本佳代子、清水健太郎

放映:NHK(1976年2月から1982年2月)

DVD:NHK

脚本出版:里山社(2017年1月発刊)

「男たちの旅路」の画像検索結果

******************************************

ドラマ「男たちの旅路」をご存知ですか?

男たちの旅路」は、NHKで放映されたドラマです。放映と言っても、実はずいぶん前です。1976年の2月から1982年の2月まで、スペシャルドラマとして全4部(12話)+スペシャル(1話)、合計13話だけ制作されました。山田太一氏の脚本その内容は、13本の映画と言えるくらい、充実した作品でした。ちょうどわたしが10代の多感な頃の作品で、放映が決まるとテレビの前で食い入るように見たドラマです。(再放送も毎回楽しみにしていました、確かVHSに録画もしました)

物語は警備会社が舞台です。俳優の鶴田浩二氏扮する第2次世界大戦を生き残ってしまった元特攻隊員の鬼上司 吉岡と、その下に配属されたノンポリの戦後世代・しらけ世代の若者(水谷豊、桃井かおりさん等)が本音でぶつかり合う物語。鬼上司の吉岡は若い奴らが大嫌いです。戦争で尊い命をかけて日本を守ってきたのに、敗戦後の日本は、ずるくて、薄汚くて、チャラチャラしていている国になってしまったと思っています。逆に若者たちの方も、吉岡のその古臭くて頑固な生き方に、うんざりしている。大きなテーマは、戦後の日本社会の移り変わりと、世代間の断絶でした。

さらにこのドラマは、当時の日本の世相を反映しているドラマです。1話ごとに取り上げられたテーマは様々。戦争体験世代と戦争を知らない世代の対立。若者の自殺。親子の関係。家族の関係。成功と挫折。テロ。老後の問題。正義と悪。身障者の生活。戦争と人間・・・等です。これって今でも、同じところが解決されずに問題として残っていると思いませんか?

キャストも東映の大スターであった鶴田浩二が、映画の斜陽化の中ドラマに進出した作品であり、当時売出し中であった若手俳優たち・・・それが水谷豊、桃井かおり、千葉県知事の森田健作清水健太郎、岸本佳代子というレギュラー陣のいま思うとすごい顔ぶれに加え、ゲスト俳優も若き日の根津甚八長塚恭平、古尾谷正人、京本正樹、斉藤洋介加藤健一など、後年息の長い活躍をしている俳優のオンパレードです。

現在では第1部から第3部まで、NHKオンデマンドで視聴できます。しかし第4部とスペシャルが今の時代で最優要作なので、そちらの視聴ができるようになることを、リクエストします。

amazonで検索すると、NHKからDVDも発売されています。NHKは値段が高いのが難点ですが、このドラマは宝物になります。わたしは数年前に全部購入してコンプリートしました。

脚本家: 山田太一

わたしは山田太一氏を、日本最高のストーリーテラーと思っています。『ふぞろいの林檎たち』『想いで作り』『早春スケッチブック』『異人たちとの夏』・・・ため息が出る傑作ばかり。山田氏を知らない方に、どのレベルかと聞かれたら、速攻で村上春樹氏と変わらないレベルと答えます。書いたドラマ脚本、書いた小説やエッセイ、全てが読むべき作品なのです。わたしは今でもamazon等で検索し、コツコツ過去作品を買い集め拝読しています。

f:id:hiroyama777:20170927143854j:plain

書かれたドラマが小説だったら、直木賞は間違いなかったと思います。時代を切り取るセンス、キャラクターを作り上げる力、全てが高品質なのです。70年代から80年代のドラマは、映画と違いストックされるコンテンツではなく、放映後消えていくことが運命でした。傑作という事実は、視聴者の記憶の中にだけ残っていたのです。映画ですと、実はたいしたことが無い作品でも、パッケージソフトや配信で鑑賞できる状態になることが多々あります。ドラマの傑作は、アクションやスター出演の作品は高価なBOXセットが発売になるのですが、アンサンブル・キャストで良質なドラマ作品という場合は、なかなか視聴できるようになりません。映画よりもテレビの方が、時代に寄り添っているからでしょうか。

なぜ?今の時代にこのドラマの事を、何度も思い出すようになったのか?

なぜ?今この時代に「男たちの旅路」をやたらと思い出すのか?なぜ?これを書いているのか?という理由ですが・・・それは自民党安倍総理のせいです、100%間違いありません。

1:政治家が、北朝鮮や中国に対し、好戦的で勇ましい事を言い、若者をたきつけている感じがします。そしてそれを自己の政策実現に利用している。

2:自民党の麻生氏のヒトラー発言の連発や小池東京都知事関東大震災時の朝鮮人集団虐殺事件への対応など、過去を風化させようとしている。

3:加計学園問題や安倍信三記念小学校問題のように、見えないところで何か(誰か)の意思が働き、責任をあえて曖昧にすることで、悪事を見過ごすという事が、当たり前の世の中になってしまっている。

4:身体障害者の方や独居のご老人、ハンディキャップがある方、シングル・マザー等、いま助けを求めている方への対応が、不寛容で不平等な時代になっている。自己責任という言葉が、乱暴に置き換えられ、一人歩きしているのです。

こんな時代の中、「男たちの旅路」の主人公である吉岡のセリフを、やたら思い出すようになったのです。

第4部2話の「影の領域」

この物語は、目の前の不正を正す人なのか、目をそらす人なのかを、問うドラマです。吉岡は、不正を正しに来た社員を追い返したことを悔やむ社長から、その若い社員に理由を説明するように頼まれ、彼らと向かい合います。そして本音を話し出すのです。

吉岡「こういうことを、うやむやにしてはいけない。大人だか何だか知らないが、世の中分かったような顔をして、こういう事を許しちゃいかん。こういう事が多すぎる。悪事は明白なのに、うやむやにしてしまう。そういう事が多すぎる。汚い事は汚い事だ。悪事は悪事だ。それを曖昧にして、結局はうまく立ち回った奴が勝ちということが多すぎる」・・・逆に彼らを焚き付け、不正を正すべきだ、自分も社長に言おう、と言い出す吉岡。

第4部3話「車輪の一歩」

この物語は車いすの青年たちとの知り合った吉岡達警備員の物語です。

吉岡を訪ねてきた車いすの青年に彼は悩みながら出した持論をぶつけます。

吉岡「君たちに迷惑をかけることを恐れるなと、言いたいような気がしている。・・・・迷惑をかけまいとすれば、外へ出ることが出来なくなる。だったら迷惑をかけてもいいんじゃないか?ぎりぎりの迷惑はかけてもいいんじゃないか。かけなければ、いけないんじゃないか」飛行機会社の搭乗拒否、それをクレーマーとするSNS等、2017年になっても、このドラマが問うた事は宿題になっているのです。

f:id:hiroyama777:20170927143924j:plain

(第4部DVD)

スペシャル「戦場は遥かになりて」

この物話は、深夜警備中の倉庫が10数人の暴漢に襲撃され、若い2名のガードマンが現場から避難したという物語です。警備会社の高圧的な上司や世間は「今の若い奴らは意気地がない、根性がない、なぜ?闘わない」などとあおります。しかし吉岡は「逃げたのは安全を優先する正しい判断だった」と言うのです。そして仕返しをしようとする若い警備士に彼が言うセリフは・・・。

吉岡「わたしは君らが周囲にしいられて無理をした行動をとるのを見たくない。あの当時わたしら特攻編成を受けた者その半数以上が、ああいう作戦は無謀だと思っていた。・・・そういういことを繰り返したくない。世間が君らに無茶な勇ましさを求めて、君らがそれに答える等という事を、わたしは見たくない。冷静になってほしい」

安倍総理をはじめ前防衛大臣の稲田氏等、やたらと勇ましい事を国会議員が言っているニュースをよく見ます。しかし、事が起こった時、彼ら自身は戦場には行きません。国防のために、自らが敵の銃弾や砲弾の前に立つ国会議員は、いないでしょう。その一族のお子さんも、戦場に行かせるでしょうか???では誰が行くのでしょう?・・・それを始めた政治家ではなく、一般家庭のお子さんが行くことになってしまいます。そうです、「簡単に勇ましいことを言う人間を信じてはいけない」のです。

f:id:hiroyama777:20170927144001j:plain

スペシャルDVD)

**************

1970年代後半から80年代前半のドラマのテーマやセリフが、今この時代にも通じってしまうという現実。このドラマ「男たちの旅路」がすごかったのか、日本の社会が成熟せずにむしろ退化したのか・・・考えさせられます。本作が時代を超えて、鑑賞に堪えうるクオリティを持つ、稀有なドラマだったことは間違いありません。

なかな昔の名作ドラマを再見する機会は無いかと思いますが、脚本も今年に入り復刻出版されていますので、ぜひ確認してみてください。

(それでは・・・あいすみません)