あいすみません

早期退職?セミリタイヤ?・・・いやいやダウンシフトです!「筋トレ」「読書」「映画&音楽&スポーツ鑑賞」で心身を整えています。

アメリカ探偵作家クラブ(エドガー)賞 最優秀長編賞受賞作:「晩夏の墜落」読了

「晩夏の墜落」

原題:Before The Fall

ノアホーリー

ハヤカワ文庫MH刊

2017年7月15日発行

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アメリカ探偵作家クラブ賞とは?

この「晩夏の墜落」は、この夏に購入して、順番待ちになっていましたが、今回ようやく読了しました。ダウンシフトを選択し仕事をセーブしたので、読書も続けてできるようになりました。

「晩夏の墜落」は2017年の長編賞受賞作品

この本を購入した動機は・・・ハヤカワ・ポケット・ミステリーとHM文庫の2種類同時刊行です。これは好んで読んでいるハヤカワ系のミステリー&冒険系小説の中でも、この作品に出版社が力を入れているということです。普通は後から文庫ですよね・・・でも最近は文庫が廉価という事が無くなり、文庫でも高価なのでどちらでもよかったのですが、書棚に納まりが良いのでわたしは文庫版を選択しました。

もうひとつの理由は上巻帯のコピー『アメリカ探偵作家クラブ賞 最優秀長編賞受賞』です。アメリカ探偵作家クラブ賞の文字、過去にも別作品で何度も観ています、権威があるのですよねコレ・・・と思ったのです。

正式名はMWA(Mystery Witers of America)というこのクラブは、1945年に創立したアメリカの推理作家の団体です。本部はニューヨークです。毎年長編・短編他の各種賞を発表しているのですが、この賞はエドガー・アラン・ポーにちなみエドガー賞とも呼ばれ、前年度に発表されたミステリー作品の中から投票で選ぶのです。ちなみの今回の「晩夏の墜落」は2017年にエドガー賞の長編賞を受賞したわけです。

過去の受賞作は?

では、わたしが読んだことがある、過去のエドガー賞長編賞の受賞作を検索してみると・・・。

1965年『寒い国から帰ってきたスパイ』ジョン・ル・カレ

1972年『ジャッカルの日フレデリック・フォーサイス

1977年『約束の地』ロバート・B・パーカー

1990年『ブラック・チェリー・ブルース』ジェームス・リー・バーク著

1992年『倒錯の舞踏』ローレンス・ブロック

1994年『女彫刻家』ミネット・ウォルターズ

1997年『緋色の記憶』トーマス・H・クック著

2005年『カリフォルニア・ガール』T・ジェファーソン・パーカー著

2008年『川は静かに流れ』ジョン・ハート

2010年『ラスト・チャイルド』ジョン・ハート

2015年『ミスター・メルセデススティーヴン・キング

です。

おおお!けっこうセンスの良いラインアップではないか!いいぞわたし!・・・すべて候補作も読んでいる通の方から見ればたいしたことないですね・・・あいすみません。

受賞作のタイトルをながめていたら、購入後家の本棚や箱に積読にしてしまっている作品が、けっこうあることに気が付きました。『長いお別れ』『笑う警官』『針の眼』『ボトムズ』『解錠師』『ありふれた祈り』・・・あーあ!早く読まなければという反省と使命感。購入まではよくやった!なのですが。

日本人作家の作品では、2004年に桐野夏生さんの『OUT』、2012年には東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』が長編賞にノミネートされています。両作とも映画化されています(『容疑者X』は韓国でも映画化されています)。このミステリー分野の賞も、いつか日本人も受賞できると良いですね。

感想

ネタバレしないように書きますが、わたしの読後感を書いているのでご注意ください。物語は、メディア王や疑惑のあるバンカーを乗せたプライベート・ジェットが墜落し、奇跡的に画家と少年が助かるところから始まります。そして落下原因の究明がFBIなど捜査機関により進められる中、この画家は本当にヒーローなのか?と、マスコミが騒ぎ始める・・・というものです。

実は読後の印象は・・・この作品はミステリーではなく、良質な人間ドラマなのではないか?というものでした。権威のあるミステリー賞を受賞という事で、盛り上がっていたのですが、違うイメージでした。不慮の事故、生死の分かれ目、子供を助けた男、捜査、疑惑、マスコミの追及、残った者達の人生の変遷・・・などが描かれるわけですが、描写が謎解きには向かわずに、とてもパーソナルなのです。

この小説は、生き残った者やこの事故に関わってしまった者達が、事故の影響により人生が変わっていく姿と、事故機に乗り合わせた搭乗者たちの過去の暮らしや出来事を、交互に描いていきます。この搭乗者たちの過去の人生の描写が丁寧に描かれている事から、墜落というその後の人生を知っている読者に、運命というものを考えさせてくれるのです。それはミステリー的というよりも、人生ドラマとしての味わいの方が深いとわたしは感じたのです。

人生ドラマとしての描写の方が、謎解きや真実の解明よりも深くて、丁寧に描けている・・・そうなると逆に本作は、コテコテのミステリー・ファンの方には、少し物足りないと感じる事になるかもしれません。

著者について

著者のノアホーリー氏の名前は知らなかったのですが、アメリカのテレビドラマ界で活躍する、脚本家であり企画者とのことです。手掛けてきた作品は『BONES-骨は語る』、そしてamazonオリジナルで評価が高い『FARGO/ファーゴ』。アメリカのテレビドラマ業界はクリエーターの層が厚いです。成功すると、あっ!という間に『スター・ウォーズ』の新作シリーズを手掛けていたりするので、今や才能あふれる若者が映画よりも先に目指す分野なのではないでしょうか。

BONES』は好きなジャンルなので数話ですが、観たことがあります。特殊捜査モノとして面白いですよね。『FARGO』は、前に後輩が「面白い」とほめていた記憶があります。わたしも、せっかくのプライム会員なので、いつか鑑賞したいと思っている作品です。・・・でも、さすがに順番待ちの本と映画が多すぎて、時間が足りないです。

お奨め度

微妙な書き方なのですが・・・・、

ミステリー&サスペンスとしては★★☆

人間ドラマとしては★★★☆

という感じです。

ラストまでの謎の解明も含め、驚きのどんでん返しという事ではなく、「そうでしたか、そこに行き付いたのですか・・・」という静かな解明です。

著者は、主人公の画家や事故に関わった人たち、事故を利用しようとする人たちの、生き様や考え方、運命の選択を描こうとしたのではないか、とわたしは思います。そういう人間ドラマとして読むと、この本の良さがより感じられるのではないでしょうか。秋になりましたが、人間ドラマを読みたいと、本を探している方にお奨めできる作品です。

わたしは最近テレビは、スポーツと一部のニュース番組しか見ないようにしているのですが、ワイドショー的なマスコミ(TV局)の描き方は、テレビ界を知る人の思う所なのでしょう。人の不幸が大好物、大衆が喜ぶものはでっちあげてでも事実を創りあげ放送する。弱い無防備な個人には強気な態度で接し、責任は取らない。いまちょうど衆議院の選挙期間中ですが、いずこも一緒ですね。これではマスコミではなくマスゴミです。この小説を読んでいて、イラッとくるのがテレビ関係者が出てくる所でした。イラッは、つまらないせいではなく、現実を思い出しての事ですが・・・。

(それでは・・・あいすみません)

 

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