あいすみません

早期退職?セミリタイヤ?・・・いやいやダウンシフトです!「筋トレ」「読書」「映画&音楽&スポーツ鑑賞」で心身を整えています。

本の紹介:北欧ミステリーの傑作シリーズ第4弾「湖の男」

「湖の男」

原題:KLEIFARVANT / The Draining Lake 

アーナルデュル・インドリダソン著

東京創元社

2017年9月22日初版

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北欧ミステリーはすごい!

いまや一大売れ筋ジャンルとなった北欧ミステリー。スウェーデンの作家ステーヴ・ラーソンの小説『ミレニアム』シリーズの世界的な成功が、面白い、売れるジャンルとして北欧ミステリーを広める原動力になりました。『ミレニアム』はアクション、スリラー、ミステリー、オカルト、歴史モノという、ジャンルの全てを内在する作品でした。作家が亡くなり書き手が変わりましたが、今も追いかけているシリーズです。この『ミレニアム』の他にも、デンマークの『特捜部Q』シリーズがとても面白いです。こちらは犯罪捜査モノであり、バディ・モノであり、どこか笑えてファニーでもあるというシリーズで、全て読んできております。あー早く次が読みたい。

この北欧ミステリーのブームは小説だけでなく、ドラマにも広がり、確かにどれも面白そうで、映画派のわたしでも視聴ウエイティング・リストに入れている作品が多数あります。『ブリッジ』『THE KILLING』などなど。あー時間が足りない。(ケネス・ブラナー主演の『刑事ヴェランダー』はシーズン1だけ観たのですが、これはBBC制作でした。小説シリーズも読んでみたい作品です)

しかし・・・何で?北欧は、こんなにミステリー大国なのでしょうか?主人公や登場人物の名前を、日本人には覚えにくいという難点がどの作品もありますが、描かれるキャラクターは、とても濃く深く描かれているという事が、まず特徴として挙げられます。そんな登場人物の濃いキャラを、トラウマ含めさらに深く掘り下げつつ、現代社会の不安や不信それらを、ほの暗く寒い情景描写に交えて、こってり練りこんでいる作品が多いのです。強烈な濃口です。人間関係も支配層と抑圧された階層、男尊女卑、DV、性犯罪、児童虐待など、洗練された福祉国家というイメージとは違う猟奇性が、描かれていきます。その強烈な背景と登場人物の人間臭さが衝突し、物語のラストに向けて深い読後感を得ることが出来る作品が多いことが、ブームにつながったのではないでしょうか。

その中でも、このアイスランドのレイクキャヴィック警察犯罪捜査官エーレンデュルが主人公の本シリーズは、最高峰の出来栄えを誇っていると考えています(先の『ミレニアム』『特捜部Q』と合わせて、わたし的北欧ミステリー3大シリーズとしています)。2012年の傑作『湿地』(このミステリーがすごい!2013年版の海外編第4位でした)を読んでから、今回の4作目(母国では2004年に発表された6作目)まで、全ての作品が濃厚な味わい、深い人間洞察を感じさせてくれるのです。その犯罪の陰にある、哀しい出来事、避けられなかった現実、運命に導かれた行為等を、丁寧な人間描写で語ってくれるのです。人間ドラマ感は、この作品が3大シリーズの中で一番強くて重いです。そう!良い意味で、とても重い作品なのです。北欧ヘビーメタル・ミステリー。こちらは、先の『ミレニアム』『特捜部Q』と違い、まだまだ未訳の作品がたくさん残っているので、翻訳出版されることを、節に願っております。応援しますので、東京創元社さんお願いします!!

アイスランドもすごい!(祝 サッカー・ワールドカップ初出場)

北欧はノルウェースウェーデンデンマークに加え、フィンランドアイスランドバルト三国をさします。イギリスは入らないのではないかと思っています。小さな国がそれぞれの特徴を持ちつつ、ゆるやかに一体化もしている地域です。

その中のアイスランド。一番人口が少ない国です・・・・なんと!僅か約33万人。これから減りますが今の日本で言えば、人口の少ない県や多い市あたりと同じです。この国のイメージは何でしょうか?寒い・冬が長い・雪・氷・大自然・・・アウトドアなイメージが強いです。

そして!・・・サッカー。2018年のロシア・ワールドカップの予選を見事勝ち抜き、初出場を決めました。ヨーロッパ予選はめちゃめちゃ厳しい予選です。アジア予選のような訳にはいきません。サッカー日本代表が今の実力でヨーロッパ予選に参戦したら、残念ですがプレイオフにも進めないでしょう。今回は前回3位のオランダが予選敗退の危機ですので。その予選を、人口が僅か約33万人のアイスランドが、勝ち抜いたのです。とても素晴らしい。お見事!全国民がサッカー選手という国では、当然無いわけですからね。

でも本当に33万人は、国で考えると少ないですよね。みんなが遠い親戚、誰もが知り合いの、知り合いの、知り合いという感じでしょうか。そんな国で起こる犯罪の捜査を描くのが、本作シリーズです。2012年に本シリーズ最初の作品『湿地』が翻訳出版され、それを読んだ時に印象的なセリフがありました。犯罪現場に駆け付けたエーレンデュルが「典型的なアイスランド的な犯罪は非計画的で偶発的なものだ」と言うものです。現地で発表された2000年のアイスランドの殺人は、国民の数からいってその通りだったのでしょう。

感想

いや~今回も濃厚かつ芳醇な味わいでした。筋トレで言うと、限界にチャレンジしたダンベルの重さ・・・です。

物語は、干上がった湖の底から現れた白骨が発見される所から始まります。その白骨の頭蓋骨は外部からの衝撃で陥没したことが見て取れ、さらに旧ソ連製の盗聴器が結び付けられていたのです。はたしてこの白骨は誰なのか?エーレンデュルは取りつかれたかのように捜査を開始する・・・というものです。

第2次世界大戦後のアイスランドと、共産・社会主義時代の東欧(ロシア、東ドイツ)との歴史の狭間で起こった哀しい出来事が、偶然に湖が干上がったことで現代によみがえってしまうのです。本作は2004年に書かれた作品です。1989年11月にベルリンの壁が崩壊し、旧ソ連を中心とした共産・社会主義国家体制が終焉に向かいました。その15年後に書かれた作品なのです。ヨーロッパに暮らす知識人であれば、個人的にも落とし前を付けなければならない出来事だったのではないでしょうか。

哀しい物語であり、青春の思い出を描く物語であり、一途な恋や理想を描く物語であり、裏切りと復讐の物語です。週末に一気読みしました。わたしに、一気読みをさせる作品だったのです。

お奨め度

★★★★

第1弾の『湿地』と第2弾の『緑衣の女』は★4以上、第3弾の『声』は★3でした。そして第4弾の本作は★4とさせていただきます。ミステリー・ファンはもちろんの事、面白い本を探している全ての方にお勧めします。

そして・・・もし仮に濃密かつ濃厚な読書体験を望んでいて、アーナルデュル・インドリスタンの著作を未読の方がいるようでしたら・・・よかったですね。おめでとうございます。今からこのシリーズを全部読んでください。希望した通りの読書体験を得ることができますので。

このシリーズは、『湿地』の前の2作と、本作の後の9作、合わせて11作も未訳があります。さあ!東京創元社さん、どんどん行きましょう!今度は2年も待たせないでください。首を長くして待ってます!!(しつこく、何度も、粘り強く、お願い!)

(それでは・・・あいすみません)

 

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