「IT/イット “それ”が見えたら、終わり」
原題:IT
監督:アンディ・ムスキエティ
原作:スティーヴン・キング
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感想
有名原作小説の映像化なので、今回はネタバレご容赦ください。無粋なことはしませんが、若干触れてしまうだろうという予感が・・・。映画鑑賞前の方が「これを読んだら、終わり・・・トホホ」にならないように、注意します。
今回の映画化は海外版予告編を観た時から、今回は大丈夫なのでは?かなり面白いのでは?と、盛り上がっていたのですが、早速映画館に行ってきました。その結果は・・・ズバリ!よくできていた!面白かったです。
安く作れて、世界各国で流通しやすいという理由からか、ホラー映画は、量産化、フランチャイズ化が進み、どの映画をみても斬新さは皆無になってしまい、時々ヨーロッパの映画で「おーそう来たか!」と思うものが出るくらいの状況でした。
そんな中の「IT」の映画化です。予告からの期待と、またいつものね、という不安が交差しつつの鑑賞ではあったのですが・・・。
学校で透明人間だったり、いじめられっ子だったりしているティーンの主人公たちが、夏休みに、危機(悪)と対峙し、友情が産まれ、トラウマと闘い、冒険をして、休みが終わり9月の新学期を前に成長し自信を付けている自分に気が付く、まさに王道の青春物語でした。
その王道の物語ながら、ホラー描写がエグイのが本作の良いところ。子供でも、クラウン(字幕ではピエロ)に、やられるときは手加減がありません。この子供でも手加減なしなところが、良い所です。今回のクラウンは、潜在意識の中にある恐怖感を具現化し、追い詰めていきます。ホラーの恐怖体験は、夜、一人でいる時に起こる、というパターンが多いのですが、今回は真昼間だろうが、みんなでいようが、お構いなしに起こるのです。昼間の心霊現象はこれはこれで嫌なものですね。
そしてティーンの一人一人のトラウマが恐怖現象と化して自分の前で具現化してしまう所は、その内容がまた辛い。弟の死で自分も傷ついているのに両親はそれを見ないふりをしている、親からの性的虐待、子離れできない親の過干渉、いじめ、などなど・・・その内容がコレはリアルだと思えてしまう内容なのです。辛いし、厳しい。恐怖は実は自分の人生の中、心の中にある。幽霊だけが怖いのではないという事が、前半きちんと描かれているので、後半の彼らの悪との対決と冒険に観客も力が入るわけです。
映画「IT」の良いところをまとめると・・・
1:ティーンの夏休みを描く王道の青春映画
2:ホラー描写は子供相手でもマジで手加減なし
3:10代だからこその、痛み、辛さを、行動の残酷さを、リアルに描く
4:現代から物語設定の80年代の青春時代を思い出しているかのような、ノスタルジックな創りも感じることで、大人でも面白いと思える
ということでしょうか。幅広い観客層を動員できる作品だと思います。
若い俳優たち・・・
本作の主演俳優たちは無名のティーンです。「ここから10年20年経った時に、何人スターとなるかなぁ~」等と、おじさんは思ってしまいました。昔ほどアメリカのティーンの俳優にキャーという時代では無くなりましたが。
わたしの青春時代ですと映画で言えば、コッポラ監督の『アウトサイダー』に、無名もしくはブレイク直前のマット・ディロン、トム・クルーズ、ロブ・ロウ等が出演していました。『ブレックファースト・クラブ』『セント・エルモス・ファイヤー』等の青春映画も同様です。キング作品で言えば『スタンド・バイ・ミー』がそうですね、今は亡きリバー・フェニックスです。
鑑賞後は、まさに80年代の青春映画を振り返りつつ、今回の主演者たちの中から何人が、その後の映画やテレビ界で活躍するか?なんて事を考えておりました。脇にいた子が後に予期せぬ大ブレイクなんてありますからね。トム・クルーズのように。
キングの映像化作品マイベストは?
今回も予習復習は欠かさず、『ユリイカ11月号キング特集』を現在読んでおります。
こういう特集・研究本、MOOK本は『ブレード・ランナー』に続き、読まなければならない本や観たい映画や美術展等との時間争奪戦を繰り広げております。とても良いキング特集です。書き手が皆さんキング好きで、詳しいので、情報として為になります。
キングの映像化作品でわたしは何が好きか?と思い出してみますと・・・
1:『デッド・ゾーン』
アメリカのトランプ大統領出現で、映画に描かれたように、事が阻止されず実現してしまったという、どっちが映画かわからない状況となった今日この頃。個人的にこの小品、とても哀しくて、印象深い映画です。ラブストーリーとしても、グッときます。
2:『ショーシャンクの空に』
王道の人間ドラマに大感動を加えた作品。文句無に観るべき映画です。
3:『グリーン・マイル』
2と同様。
4:『シャイニング』
キング自身はダメ出ししているようですが、好きな映画です。人間が狂っていく様子を、ここまで段階追ってきちんと描いた作品は無いですよね。
5:『スタンド・バイ・ミー』
青春映画の傑作。『IT』からホラー描写を無くすと、この映画になりますね。
6:『ミスト』
ラストシーンに驚いた映画です。逆に最悪の気分になりたい時にお勧め?そんな時があればの話ですが・・・。すごいラストです。
7:『キャリー』
70年代のデパルマ監督版しか観てませんが・・・たぶんそれで良いと思います。
8:『ペット・セメタリー』
セマタリーではなく、映画なのでセメタリー。この作品何とも言えぬ哀しさがある映画でした。愛する者の死が繰り返される悲劇。マジな映画でした。
9:『クジョー』
犬にひたすら襲われる話・・・ですが、なぜか?今思い出してしまったので。
うーむ、1以外はメジャー作品が多く、普通ですよね?『1408』どうしましょうか?入れた方がよいでしょうか?特に「えーコレが好きなの?」というような展開では無い感じとなりました。作品数が多いのでこの瞬間思い出していない可能性も大なので、何か思い出したら加筆します。ちなみに今回の「IT」は、確実にベスト入り作品です。
お奨め度
とても面白い映画でした。
ホラーというジャンルを超えて、コアな映画ファン以外のライトユーザーにも大お奨め!です。良き青春映画であり、怖いホラー映画である・・・とても楽しめます。
映画のラストにチャプター1というクレジットがありました。ということは・・・27年後=現代を舞台にしたチャプター2(第2章)が創られるという事ですね。もう撮影開始してるのか?2019年に公開というラインアップになっています。監督及びクラウンは続投ですので、正統派の第2章です。あー楽しみです。来年やって欲しいくらいですが、第1章のヒットを確認して、GOサインが出たという事でしょう。制作予算も使えるのではないでしょうか、今回のヒットを受けて。
(それでは・・・あいすみません)