amazonプライム・ビデオのオリジナル作品
2014年にスタートした刑事ドラマ『ボッシュ』シリーズ。LAハリウッド署の殺人課刑事を描くシリーズも高評のうちに、日本ではamazonプライム・ビデオでシーズン3まで公開されています。
そして、すでにシーズン4が2017年配信と発表されています。
このアメリカのエンタテインメント業界紙ヴァラエティ(むかし日本版も雑誌で出てましたね)では、シーズン2の評価がとても高く、採点した視聴者の84%が5点満点を付けたと書かれています。
わたしはシーズン3まで視聴したのですが、この結果には全面的に納得です。この『ボッシュ』シリーズは、とても良く出来ています。わたしはシーズン1は観ても、2以降はあきてやめてしまうというパターンが多いので、久々の完投です。『LOST』以来かな。今回はストーリー紹介は、ネタバレをしないようにして、このシリーズの魅力を考えてみたいと思います。
2001年以降、『24』『プリズン・ブレイク』『LOST』などから、始まったアメリカのテレビドラマブームですが、最近の作品はだんだんと設定がオーバーなものが増えてしまいました。超人同士の戦い、宇宙人の侵略、ゾンビ(大好きですが!)、何百発も敵の銃弾を浴びてもなぜか主人公にだけは当らないアクション、幽霊、実は悪魔に取りつかれた主人公・・・・etc想像力を刺激してくれる内容ではあるのですが、あまりにも「ありえねー」な設定なので、本気というか真実ぽさを求めるドラマファンには、見るものが少なくなってしまいました。お金がかかっていても、魂が無いという感じでしょうか・・・。
映画でマーベルの一連のシリーズ、『Xメン』『スパイダーマン』『アイアンマン』『アヴェンジャーズ』などの世界的な連続大ヒットの影響もあるかもしれませんね。ああいうスーパーヒーローものが、好まれているというマーケティング。
わたしは、日本ではDVD発売されなかったのですが、2002年から2008年に全米オンエアされた、『The Wire』というボルチモアを舞台にした警察と麻薬組織の複雑な関係と対決のドラマが、とても気になり観たかったです。(オバマ大統領お気に入り、という記事を読んだ記憶が有りますが)
こういうリアルな捜査や、人間くさい犯罪モノが好きです。本でもミステリーやスリラーのジャンルモノが大好きなので。
内容的に『ボッシュ』シリーズは、刑事と犯罪者、警察組織、行政機関の縄張り、政治などが、複雑にからみあい、LAという超大都市の裏側にうごめく、欲望・危険なにおいを、描いているのを評価しています。amazonプライム・ビデオのオリジナル作品の中でも、特にとてもよくできているシリーズです。
この『ボッシュ』シリーズは、シーズン1から観ていく方が、主人公と周りの人間関係の変化を、理解できるのでおすすめです。
原作:マイクル・コナリー
このシリーズの良さは、原作者の創りだした主人公のキャラクターと、犯罪とその捜査を描くストーリーの巧みさではないでしょうか。原作小説の翻訳近刊である『転落の街』(講談社刊)の後書きに、ドラマのことがふれられています。
①シーズン1
『シティ・オブ・ボーンズ』(2002年刊)『エコーパーク』(2006年刊)を中心に『ブラックハート』(1994年刊)の要素も加えた構成
②シーズン2
『トランク・ミュージック』(1997年刊)を中心に、『ラスト・コヨーテ』(1995年刊)と『転落の街』(2011年刊)の要素を加味
③シーズン3
ハリー・ボッシュシリーズの原典である『ナイトホークス』(1992年刊)を中心に、『夜より暗き闇』(2001年刊)の要素を加味と解説されています。
シーズン4はいかなる物語になるのか?母親の殺害の意外な真相が中心になるのは暗示されていますが、シーズン3で犯罪者に対して、その過去の出来事から暗黒面に落ちた感があるボッシュが、自分の気持ちと警察官としての正しい振る舞いの間で、どのような行動を選択するのかが、今から楽しみです。
そして1992年から続く原作シリーズも、翻訳新刊が出版されます。『ブラックボックス』(講談社刊)です。
アメリカでは2012年に出た作品です。前作の『転落の街』では、彼の定年延長が描かれれていました。小説シリーズの中には、主人公の年齢を変えずに描き続けている作品もありますが、マイクル・コナリーは自分の年齢と共に、主人公の年齢も上げていっています。そうすると人生の転機が描かれることになるので、わたしのような読者も一緒に年を重ねていくことになります。
とても良いシリーズですので、警察モノが好きな方にはお奨めです。ぜひ最初の作品『ナイトホークス』から、できるだけ発表順に読んでください。扶桑社から出ていた初期作品が手に入りにくいのが難点ですが。
主演:タイタス・ウェリヴァー
ハリー・ボッシュ役を演じるのは、タイタス・B・ウェリヴァー。( Titus B.Welliver/1961年3月12日生まれ/56歳 )過去にアメリカの映画やドラマを観ることが好きな方ですと、何度か見かけたことがある顔ですよね。ついに主役までたどりつきました。人に歴史あり、若くしてトム・クルーズのように、栄光をつかむ俳優もいますが、こういうキャリアも素晴らしいです。
ちなみにわたしは『アサルト13 要塞警察』というジョン・カーペンター監督作品のB級アクション臭のプンプンするリメイク版で、冒頭で激しく射殺される売人役と、『LOST』に、いたいた!と覚えていました。
ベン・アフレックの監督作品に連続して出演していますが、どんな役だったあまり覚えていないので、また今度再見してみようと思います。
アメリカのエンタメ業界は層が厚いので、若き日にチャンスをつかめなくても、悪役やチョイ役で経験を積んで修行をすると、実力がつき、うまい役者と評判が高まり、50歳過ぎてから、こういう大役がまわってくることもあるのです。日本ですと俳優の層が薄いので、能ある方は若い時に出てきてしまいます。こういう50歳以降で、初主演はなかなかないですね。企画も若者狙いの作品ばかりですので。
星取
シーズン3
★★★★(5点満点)
このシリーズは、通して視聴するに値する質があると思います。話数も24話ではなく、短く丁度良いので、シリーズを持たせるための余分な話が少なく、キレが良いです。
ひじょうによくできている原作小説から、エッセンスをひっぱってきていますので、犯罪と捜査の関係も面白く視聴できます。
日本の『相棒』『警視庁捜査一課9係』などの刑事ドラマファンの方も、ぜひアメリカの本格刑事ドラマを視聴して比べてみてください。主人公の年齢も近いので。
(それでは・・・あいすみません)