『定年後 50歳からの生き方、終わり方』
楠木 新 著
中公新書刊
2017年7月5日8番版
10万部突破だそうですが・・・
10万部突破という帯につられて、読んでみました。
とにかく人生が終わるということを、意識して書かれた本です。しかもどちらかというと、話題が暗めです。みなさんそんなに苦労してるんでしょうか・・・、定年まで勤めたうえで、会社を辞めた後でも。
60歳や65歳で定年を迎えた後、会社に毎日行くことが無くなるとそんなに辛いのですか?みなさんホントですか。この本の退職というのは、定年退職ですよね?中途退社や早期退社ではなく、業績不振で解雇を迫られているわけでもなく。
わたしは今年、50代半ばを前にして、自主的にダウンシフトを選択した身ですので、会社というものとの付き合いに、そんなに依存しないと決めた人生です。
もちろん収入というものをどれくらい今後必要なのかが、一番考えに考えなければならないものなのですが、団体行動が嫌いなわたしは、大勢と群れなくても自分の道を歩んでいけるように、事前準備をし結論をだしたわけです。
ダウンシフト1年目は、住民税、社会保険料など、前年年収での計算となるので、ものすごくコストがかかります。わかってはいたけれども、これはお財布だけではなく、心にもグッとくるわけですが、それ以外はいたっていい感じです。
残念ながら、この本で書かれている事例は、どれもわたしにはピンときませんでした。
「昼間は家にいないでくれ」と妻に言われた、何て事例を読んで役に立つのでしょうか?黒澤明監督の傑作『生きる』が事例紹介で書かれていますが、今の50代でこの作品を知っている、興味があるという人は、ほぼいません。わたしの周りの映画好きの中でも、観たことがある人はクラシック映画も観る一部だけです。何となく、この10年以上書かれていることの繰り返し感があります。
これは2017年に書かれた本だと思うのですが、10年くらい前の本を読んでいる感じがしたのです。
タイトルと中身が違うのが最大の損
今回はタイトルに50歳というワードがあったので、自分はストライクゾーンかなと思い、購入したのですが、わたしのイメージと違いました。
中身的には、50代半ば前のわたしが読むと、もっと上の人のことを書いている感じがしたのです。そうですね、65歳とか70歳とか・・・そんな感じ。
この本の目次を抜粋してみますと、
・半年たつと立ち上がれない
・曜日の感覚が無くなる
・生活のリズムが乱れ始める
・名前を呼ばれるのは病院だけ
・誰もが独りぼっち
・日本人男性は世界一孤独
・付き合いは消滅
・会社は天国
・主人在宅ストレス症候群
・居場所を探す
・死から逆算してみる
とあります。
うーん、この本が想定する50代とはどんな50代なのだろう?この本を読んで、何を思えばよいのでしょうか。もっと一人一人が、自由でいいのに。定年退職後も結局は、会社に縛られ、血縁関係に縛られ、地元に縛られ、そんなことになっているのでしょうか。
何度も言いますが、無理やりのリストラや追い出し部屋の本であれば、人生をいかに立て直すか、やり直すか、ということが重要になります。
でもこの本は、『定年退職後』がテーマで、対象が50歳からの本です。50歳で「いい顔で死ねる」なんてこと、考えても意味が無いと思います。
一日一日、試合から試合へ。今日を、今週を、今月を、今年を、まず楽しむ。そのために、計画も、計算も、健康管理も、50年も生きてこられたんだから、きっちりしましょう。50代まで普通のサラリーマンをできた方なら、出来ますよ。簡単に。
団体行動がわたしは嫌いです。だから一足先に群れから離れました。リスクは大ありです。でも、これも個人の自由なわけです。別に自分の選択を他人には推奨しません。
団体行動が好き、大勢でいるのが好き、という人もいるわけですから、これも否定しません。自分が好きな方を選んで生きていけばよいのです。一人で生きていきたければそれもよし、時々山奥から里に下りてきて、人との距離を縮めることがあってもよし。
この本の本当のターゲットは、いま孤独で悩んでいる、現役時代と決別できていない元サラリーマン・元管理職の70代向けの本ではないかと思いました。
星取
今回は星取の評価はしないことにしました。なぜならば、わたしには必要のない本だったからです。これは本の評価とはまったく違うものです。タイトルの付け間違いかな?
『定年~延長するか退職するか:65歳からの生き方、終わり方』
の方が良いと思います。タイトルは 作者ではなく、出版社のせいかもしれませんね。
中身とタイトルのミスマッチのせいで、もっとアクティブに参考になること、背中を押してくれること、などが書かれている本を期待してしまったせいで、厳しいことを書いてしまう状況になってしまいました。
でも10万部以上売れているのは、この企画には、何か需要があるんでしょうね。マーケティング的には正しかったのか・・・。
(それでは・・・あいすみません)