原題:Nos Amis(Our Friends)
監督:コリン・ハンクス
2017年/アメリカ映画/ドキュメンタリー
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パリでテロに遭遇したアメリカのバンドのドキュメンタリー
2015年11月13日金曜日のパリ。アメリカのバンド「イーグルス・オブ・デスメタル(Eagles of Death Metal)」のパリ公演で事件は起こりました。(同日にサッカー場、レストラン、を狙った同時多発テロです)
イスラム過激派と言われている犯人3名はバンドが演奏中の劇場を襲撃し、場内で観客に向けライフルを乱射し、89名が命を落としてしまいました。犯人は自爆と警官により射殺で全員死亡しています。
事件の現場はバタクラン劇場。ライブハウスです。
Billetterie | Site officiel du Bataclan
この時まさに戦場と化した同劇場で演奏していたバンドが、事件から3か月後に、途中で中断したコンサートを最後までやり終えるために、再びパリの同劇場の舞台に立つ姿を描いたドキュメンタリーです。
イーグルス・オブ・デスメタルとは?
このバンドのことは、今までまったくカバーしてませんでした(あいすみません)。バンド名にあるデスメタルの一言で、彼らがヘッドバンキングなメタルバンドと思いますよね。しかも・・・デス!ですので。でもイーグルス・・・もついてるぞ?何だろう??わたしもこのテロのニュースを初めて観た時には、そう思っていました。アメリカのデス・メタルバンドが13金に狙われたと。聞いたことが無かったので早速検索しました。
ところが!!音を聞いてみると・・・、「あれ?パーティー感覚の良い感じのロックンロールじゃない」とずっこけたのです。youtube等で映像を確認すると、彼らはチョイダサでチープ感ありありなんだけど、面白いよね、いいよね!と言いたくなるナイスガイ!まったくイーグルスではないし、デスでは無いし、メタルですら、ないのです。
さらにバンドの詳しい情報はアメリカ在住の評論家 町山智浩さんが、解説してくれています。
これを読むと思った通り!バンド名と音が違うのは、わざとなわけです。彼らはある意味、パロディ精神あふれる男気ロックバンド。
映画の中でも描かれていますが、リーダーでボーカルのジェス・ヒューズが、『クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(石器時代のおかま)』のリーダーのジョッシュ・オムと一緒に組んだバンドです。二人は高校の同級生で、いじめられっ子のジェスをジョッシュが守った時から、友情が始まったのです。そして先に成功したジョッシュに背中を押されて、人生が上手くいっていなかったジェスは、二人でこのバンドを組むことにしました(ジョッシュにとってはサイド・プロジェクト)。友情のバンドなのです。
映画の中で語られる恐怖と葛藤
映画では、劇場から脱出できたバンドのメンバーの、当日の恐怖の体験を聞くことができます。そして自分達のコンサートがテロの標的になり、89名もの死者を出すことになってしまった葛藤も。
さらにU2のボノとエッジの二人も登場します。同時期にパリでのコンサートの予定がこのテロで中止になったのです。「テロリストはサッカー会場、レストラン、コンサート会場と、人々が楽しむ場所を狙った」と非難するU2。U2は順延されたパリのコンサートに、イーグルス・オブ・デスメタルのメンバーをゲストで招待し、彼らの活動を後押しします。
パリには戻り演奏はしたが・・・、でも自分たちの11/13のコンサートは途中で終わったままである。ジェスは恐怖に負けそうな気持と、最後までやらなければならないという気持の中で、揺れてるのです。
そして3か月後パリのバタクラン劇場の改装も終わり、イーグルス・オブ・デスメタルは、再びパリのあの会場で演奏することを決意します。テロに屈しないため、亡くなられた方々のため、もう一度会場に来てくれるファンのために・・・。
星取
★★★☆(5点満点)
ロックファンとしては悲しく辛い内容です。一般人しかない、コンサート会場が狙われるなんて。しかし勇気を与えてくれる作品でもあります。バンドは再び力強い演奏を、テロが起こった会場で聞かせてくれるのです。
音楽の力、人間が不当な扱いを受けた時に立ち向かう力、そんな力を見せてくれる作品です。この映画を、バンド名で勘違いして、観ないのは大損ですのでご注意を!
(それでは・・・あいすみません)