「暗殺者の飛躍」
マーク・グリーニー著
ハヤカワ文庫NV
2017年8月25日発行
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暗殺者グレイマン シリーズは、読むアクション映画
このシリーズは、2009年にアメリカで始まり2012年から翻訳出版が開始された、新世代の冒険小説の大傑作シリーズ。
主人公は暗殺者。陰謀に巻き込まれCIAを解雇され、現在はフリーランス。古巣のCIAからは射殺命令が出ているという、ヤバい状況。あだ名はグレイマン、なぜそう呼ばれるかというと、人目につかない隠密行動が得意だからである。たとえ彼と出会っても、誰もその風貌や印象を語ることはできない、謎の存在なのです。
本との出会いはいつも偶然です。本屋で手に取り、ピピッとくれば購入、家に持ち帰りすぐに読もうと思えば読書開始、思わなければ積読に回ります。積読に回ると、いつ読むことになるか、わたしにもわかりません。このグレイマンシリーズは、即読書を開始した作品で、1作目を読んだ後は、シリーズを通じて追いかけているのです。
このシリーズの何が面白いか?
1:ストーリー展開
2:主人公のキャラクター
3:敵のキャラクター
4:アクション描写
です!!
まさに読むアクション、上手く言えませんが、傑作アクション映画を文字にして読んでいるような感じなのです。
主人公グレイマンの生き様や心情は、暗殺者でありながらも筋が通っており、悪人は対象にしても一般人は巻き込みません。主人公の男の生き様語り小説ってありますよね。
特にハードボイルド、探偵、冒険系の小説には。探偵スペンサーシリーズ、アル中探偵マシュー・スタガーシリーズ、最近はまっているLAの刑事ボッシュ シリーズもそうです。主人公のキャラクターが生き生きとしているので、このシリーズは面白いのです。
そしてアクション描写のうまさ。目に浮かぶわけです、具体のシーンが。ピンチを乗り越える機智、身体に受ける痛み、武器の扱い、罠の仕掛け方・・・・・どれも非常に適格かつ具体的で、無駄な文章が排除されているので、テンポも最高。著者のマーク・グリーニーは、本シリーズでデビューを飾りましたが、今ではベストセラー作家の仲間入りです。
シリーズ第6弾「暗殺者の飛躍」は・・・
そして2017年に翻訳されたのが、シリーズの第6弾「暗殺者の飛躍」です。物語はネタバレしないようにしたいので書きませんが、以下読む前の方はご注意ください。
このシリーズは第5弾の「暗殺者の復讐」まで、グレイマンとCIAの確執が大きな幹として描かれていました。それに個別の暗殺案件が絡んでくる展開だったのです。そのCIAと対決し、ある結果がでたのが第5作だったわけです。
シリーズ第5作で第1期の終了というか、この第6作が出るのであれば、モデルチェンジが必要であるという状況でした。そんな状況の中、この第6作を、いつもの本屋の定期巡回・・・海外翻訳文庫のコーナーで見つけて即買い、即読書開始となったわけです。
イメージをわかりやすくするため、過去5作を映画で例えると・・・・、グレイマン役の主演候補としては、『ジェイソン・ボーン』をやってしまっていますがマット・デイモン、『ラ・ラ・ランド』『ブレード・ランナー2045』のライアン・ゴズリング、『X-MENシリーズ』『スプリット』のジェームズ・マカヴォイ、のような知性、身体、能力と一般人と変わらない普通さを、持ち合わせている俳優かなと思って読んでいました。
監督だったら、『ジェイソン・ボーン シリーズ』の監督も有りですし、『ザ・バンク』のトム・ティクヴァ監督や『トィモロウ・ワールド』『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督など演出力・構成力・緩急がつけられる旬で一流な監督を推薦したいです。
では今回のシリーズの第6作「暗殺者の飛躍」はと言うと・・・、まずグレイマンが、クリス・パイン、クリス・プラット・・・のような、筋肉隆々のもっと明るいアクションスター的なイメージに変わったのです。大げさに言うと、今は亡きポール・ウォーカーや・・・そうですねジェイソン・ステイサムでもよいくらいです。敵はまるでドルフ・ラングレンやメル・ギブソン。おおお・・・これでは。
監督はシルベスタ・スタローン(『エクスペンタブルズ』)ですね。明るいドンパチ大作アクション映画のイメージ。主人公には何十人もの敵がいくら重火器で狙いをつけ何千発の弾をぶち込んでも、当たらない感じです。そう!別の言い方をするとジャック・バウアー『24』な感じ・・・。
今回の第6作で、これくらい作品世界というか、イメージが一転してしまいました。主人公のキャラクターも、合わせて明るくなっています。冷徹に成功率を考え隠密・単独行動を好むつつも、他者に対する筋を通す人というよりも。もっと素直に出逢いと人間関係を大切にする人になったのです。これは第5作で大きな心の重荷が解けたからでしょうか?
今作は、やはり第5作までの大筋の終了から、次なる展開に向けての転換を図った作品といえるでしょう。アクション中心になり、キャラクターの深みが減りました。先ほどの映画のイメージの例えではありませんが、新鮮さがなくなり、安全策をとった感じなのです。冒険小説なのに、作家が冒険してないがもったいない。
わたしは個人的には、出るであろう第7作では基本に立ち返ってもらい、もっと複雑な背景を持つストーリーにしてもらいたいと思っています。
お勧め度
このグレイマンシリーズは間違いなくお奨めです。第1作から第5作まで全て4つ★以上!どれも面白いです!!
今回の第6作は、方向展開を図り★★☆という感じです。でも冒険小説、スパイアクションが好きな方は、水準以上なのでご安心ください。最初から読んでいるマニアックなファンの筆者が、思っていることが厳しすぎるかもしれません。でもそれくらい「グレイマンシリーズ」は、今までの全てが素晴らしい作品であり続けたのです。
あー早く第7作が早く読みたい!
(それでは・・・あいすみません)