邦題:「新感染 ファイナル・エクスプレス」
英語原題:「Train to Busan」
監督:ヨン・サンホ
主演:コン・ユ、マ・ドンソク
2016/韓国映画
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鑑賞前
予告編サイトで最初に海外版の予告を観たのは、去年のこと。「おおゾンビだ」と胸躍り、血が湧き上がってしまったので、その日はダッシュで ”いきなりステーキ” に行き、肉を喰いあさりました。「ウー」とか「オオ」とか唸りながら、ただひたすら肉を喰いつくす男たち。実はゾンビではない わたしは、翌日食べすぎで腹を下しましたが・・・トホホ。
とにかく、すごく期待していた作品です。韓国映画がイチオシという状況が続いている今日この頃。スリラー、アクション、オカルト、残酷、ホラー部門では、アジアでナンバー1の企画・製作力を持っていると考えています。
ゾンビっていつの間にかに、普通の言葉になり、普通に日本人が覚える知識になりましたね。わたしの子供が、小学3年生くらいの時だったでしょうか、わたしの前でいきなり「ゾンビ!」とか言い出して、「ウー」と唸りながら、ユラユラ歩いたので、仰天したことを覚えています。「お前いったい誰にそんなこと教わったんだ」と。たぶん情報元は携帯ゲームかな?息子の友達が子供禁止のソフトを、家に持っていたのではないかと思っています
ゾンビは、一大ジャンルになりました。創られすぎている感もあり、ゾンビ映画であることを隠す宣伝パターンも多いです。2002年の映画版の『バイオハザード』1作目は、ガール・アクションみたいな宣伝でしたね、観に行ったら、ただのゾンビ映画。同じく2002年の『28日後』という作品も、監督が『トレイン・スポッティング』の監督でしたので、人類破滅のアート系作品の感じでしたが、観に行ったらこちらも立派なゾンビ映画でした。
今作は邦題を「新感染」とつけ、ダジェレ系にして、重さを排除してきました。この映画会社のセンスと戦略はどうでしょうか?・・・・・コメントはひかえます。この邦題のセンスは、モロにゾンビと感じさせる映画のタイトルにする方が損、という判断かと思います。損で付けるか、得で付けるか、タイトル=ネーミングのセンスは、仕事の重要ポイントです。すみません・・・アイデアを出してもいない奴が、勝手な事を言いました。
何でみんなゾンビが好きなんだろう?人間の命のはかなさ、運命の残酷さ、生きる者と死する者の交差、人生とは何か、記憶とは何か、人間愛とは何か・・・、哀愁と残酷さのマッチングが、良いのではないかと考えています。そんなことを考えたので、わたしは自分がゾンビになる前に、人生のダウンシフトを選択したのです。???・・・ホントは、そんな理由じゃ無いはずですが。
ゾンビ映画の思い出
わたしとゾンビ・・・この最初の出逢いは、これはもう間違いなく、1977年のロメロ監督の『ゾンビ』こと『DAWN OF THE DEAD』です。テレビ放映で観たのが先かな?記憶が定かではないですが、とにかくこの作品を観た時に、わたしの心にゾンビ映画に対する愛が産まれました・・・めでたし、めでたし。その後は名画座で映画館鑑賞しています。
その後時は経ち、映画のソフト化の時代となり、VHSのソフト買いました、いろいろ編集の長短バージョンがある作品ですが、どのバージョンだったか?当時存在したビデオメーカーのビクターから出ていたと思います。サントラCDどころか・・・まだLPの時代ですが、演奏したイタリアのバンドのゴブリンが好きで、輸入版屋で購入しました。どこまで好きなんだ・・・ロメロ監督の「ゾンビ」のことが。
今では、ダウンシフトしてかまえた書斎の本棚に、ゾンビ関連の本やDVDが鎮座しています。マジで神のように。
いつも思うのですが、わたしの本棚の一部の書籍やDVDは不味いです。何が不味いかというと、冤罪事件の本を読むたびに、何か重大事件の犯行を疑われ、警察がわたしの書斎を家宅捜査をすると、その本棚に並ぶものは・・・DVDの『ゾンビ』『悪魔のいけにえ』『死霊のはらわた』『呪われたジェシカ』などが多数あり、書籍も以下の『ゾンビ映画大マガジン』『ゾンビ映画大辞典』ほか、『アメリカ殺人白書』『切り株映画の世界』等が散見します。心象悪いです。もちろんその横には、申し訳ない程度に村上春樹氏の小説が解毒剤のように置いては有るのですが・・・。完全なアリバイが無いと、冤罪で死刑になる可能性大ですね。どうしましょう???
所有するゾンビ本をご紹介すると・・・、
いま値段を観たら3,800円もします。よくぞ買ったなあ。内容は1932年から2002年までの期間に制作された世界のゾンビ映画の資料です。レアというかお目にかかれないような作品も網羅しています。著者の執念を感じる質の高さです。でも・・・生きる上では何も役にたちません。
また洋泉社・・・この出版社には、どれだけ貢いできたことか。出版不況は関係なく購入してます。これからもこの関係は続きそうです。こちらは21世紀に作られたゾンビ映画の紹介本です。
『イタリアン・ホラーの密かな楽しみ』(フィルムアート社/2008年)
これは厳密にはゾンビだけの本ではなく、イタリアの全てのジャンルの傑作と言われるホラー映画と有名クリエーターの紹介本です。ゾンビにコーナーを割いております。
鑑賞後
ぶっちゃけ面白かったです。物語は書きません・・・と言っても予告編通りです。釜山までの特急列車内外での感染者=ゾンビとの大死闘。誰が生き残るか?
映画のいつものパターン通りの展開(脇役の死に方、悪人の末路など)なのか、こういう所の演出が上手いか下手かが勝負なのですが、この作品は監督は良い仕事をしました。物語の展開でも、わたしは映画やスポーツ鑑賞だと、何にでも簡単に感動して泣く方なので、参考にならないかもしれませんが、ラストけっこう泣けました。子供がからむとね・・・どうしても。メインのキャラクターの描き分けが巧みです。
今回の感染者=ゾンビは、ダッシュ系です。しかも超ダッシュ。あまり面白くありませんでしたがアメリカ映画の『ワールド・ウォーZ』や、先の『28日後』と同じ感じ。感染してからゾンビ化の時間が短いのも同様。古典と言いますか、あの70年代のユラユラ歩いていて遅いので油断すると、いつの間にかに横にいてガブリと噛みつかれるというパターンと、どちらがより怖いか?わたしはユラユラなのですが、よりアクション映画としてのスピード感が出るのは、このダッシュ系です。
上記の韓国版映画ポスターの一番右にいる、俳優のマ・ドンソクって韓国映画観てると、良く出てくる男優ですね。脇を固めて今回も良い味出してます。韓国映画は脇役も、良い顔の俳優がそろっています。特に中年男性は・・・また彼かというくらい同じ人が、たくさんの映画に出ているのですが、皆さん本当に演技の上手いアジョシ(おじさん)です。
星取
★★★★
パターン通りの王道ゾンビ映画としての展開・・・そうです、これで良いのです。怒涛のアクション。予算超過を防ぐであろう、特急車内という限定空間の妙。でも巨大なモブシーンもある大作感。ラストに向かうにつれ、キャラクターに感情移入ができるような物語展開なので、人間ドラマで思わずもらい泣き・・・ラストに泣けるゾンビ映画なのです。
ゲロゲロな描写はそんなに多くありません。女性でも安心して、この面白いゾンビ映画の世界を体験してください。
私見!ゾンビ映画コレも面白い(おまけ)
おまけにゾンビ映画で、上記以外の面白い作品をご紹介。
『悪魔の墓場』(1974年/イタリア)
特殊メイクがとてもリアルで、気色悪い作品(つまりはゾンビ・メイクのレベルが高い)。本物の死体が歩いている、という嫌な感じがパーフェクト。
物悲しい雰囲気の田舎舞台の映画。ミステリータッチで映画は語られ、ラストの真相がわかる時のどんでん返しの見事さ。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年/イギリス)
エドガー・ライト監督とサイモン・ペッグの黄金コンビによる、ゾンビ愛あふれる、イギリスのダメ男と女たちのコメディ映画。
『REC』(2007年/スペイン)
カメラが自分の目線というPVO方式を取り入れたゾンビ映画。目が回るほどのアクション。物語の構成も秀逸。
『ゾンビ・ランド』(2009年/アメリカ)
ゾンビ映画版『スクリーム』・・・ゾンビ映画のお約束事を全てパロディ化した作品。
生きるために実は必要がない知識を、たくさん持てるのはとても贅沢ですね。たとえそれが、ゾンビの事でも・・・。
(それでは・・・あいすみません)